キノコをたくさん入れたハッシュドビーフを作った。舞茸の束を手で割きながらふとカサの裏を見てみると、スポンジのように小さな穴がたくさん空いていた。
舞茸を観察しながら、この前荒川さんに教えてもらった話を思い出していた。ウラジミール・ナボコフは自伝の中で、ひだのあるキノコを好む西洋の人々を見下し、イグチ類(カサの裏がスポンジ状)のキノコこそが本物のマッシュルームだと謎の自尊心を披露しているらしい。その時は、しめじやしいたけ、エリンギあたりを思い浮かべて「裏にヒダがないキノコって身近にないな」と思っていた。荒川さんに画像で見せてもらったロシアの山で採れるイグチ類のキノコは、カサの裏に針で開けたような小さな穴が密集していて結構気持ち悪かった。蓮の花托(種が入っているブツブツした部分)がダメな人は、まじまじ見るのが厳しいと思う。同様に、マイタケをまじまじ見るのも気をつけた方が良い。
夕方、夏休み明け1回目のゼミに顔を出した。どの部分も必要なピースだと思える文章を書くには、深夜テンションで書かないようにしないとね、という話になった。あるアーティストは朝4時から6時の間を、今はまだない作品のことを考える時間にしているそうで、みんなで早起きへの漠然とした憧れを抱いた。
ゼミの後の雑談タイムが盛り上がり、大学を出たのは23時頃だった。晩御飯抜きでしゃべり倒していたのでお腹が空いて、車でココスに行った。私はびっくりドンキーが大好きなので、地味に初ココスだった。7年くらい前に荒川さんに行ってみたいと言ったら、「行くほどでもないよ」と一蹴されたことがある。その時、ただ行ったことが無いだけで、めちゃくちゃ行ってみたかったわけでもなかった。そのため特に反骨精神も湧かず、そのまま行かずじまいだったのだ。
初めてのココスはおいしかった。初めてなので、一番ノーマルな包み焼きハンバーグを頼んだ。メニュー表に書かれている通り、アルミの包みをナイフの背で切って開けた。熱々のソースはまだぐつぐつしている。付け合わせにジャガイモが乗っていて、余ったソースを絡めて食べるのだという。ビーフシチューのようなソースを無駄にしない工夫だ。お腹が空きすぎていて、吸い込むように食べた。寝る直前に食べない方が良いというけれど、空腹のまま寝ようとすると虚しくなるので、そういう言説は無視した。ココスでは変な先輩の話をたくさんして、1時くらいに解散した。明日から4時起きしたい! という気持ちは、「明後日からで良いや」になっていた。



