2025年6月22日日曜日

120km/h

 


弾丸で、福島にある諸橋近代美術館に行ってきた。
「ととのう展——ヘルスケアにつながる美術館」という企画展の、マインドフルネス関連のパネルを関西大学の小室先生が監修していると聞き、見に行くことにしたのだった。

車で行ってみたら高速使っても片道3時間半で、思ったよりも遠かった。
帰り道、栃木らへんで最高速度120km/hの区間があった。普段使う高速道路は最高速度100km/hなので、さらに20km速く走って良いわけである。三車線の真ん中を怖気付いて100km/h前後のまま走っていると後ろからくる車にどんどん追い越されるので、自分も120km/h出してみることにした。
感想は「意識した側から過去になっている」である。ああ、もうすぐカーブだから少し体を傾けるかと思った時にはもうカーブを通り過ぎているみたいな……。どうやってカーブを曲がり切ったのか、認識する前に通り過ぎて思い出せないのだ。動体視力が追いつかない。新幹線の運転手はこの倍以上のスピードで走るのだからとんでもないことだと思った。
120km/h出すのは少し頑張ってみて、すぐやめた。心臓が知らない痛みを訴えていた。
そして、今の自分が実感を持って走れるのは大体98km/hくらいだと理解した。下り坂で100km超えてはまた90km後半になるくらいが自分の身の丈に合っている。

120km/h区間が終わり、さらに少し行くと少し道が狭くなって、気づいたら80km/hで走っていた。流石に遅すぎるかと思って標識を見ると80と書いてあって、適当だったことがわかった。こういうことがよくある。なんとなく40km/hで走っていると実際40km制限の標識が立っていたり、ここは60km出せるなと思ったら標識に60と書いてあるのが見えたりといった具合だ。そういう時、国の道に対する見解と自分の実感が一致しているなと思う。

2025年6月21日土曜日

長葱のティラミス

 


奨学金採択祝いにケーキ屋さんに行った。
そこは野菜を使ったスイーツが売りのお店で、長葱のティラミスと蕪のレアチーズケーキを買って帰った。
黒豆茶を淹れて、ケーキを食べた。同居人が長葱のティラミスに対して「『おいしい』と言いたくなる味」と言っていた。一口もらってみると言いたいことがなんとなくわかり面白かった。

しずくちゃんである女の子のキャラクターが「ヘルシーなケーキを作ったよ!」と野菜でできたホールケーキを持ってくるシーンを思い出した。それはホイップの代わりにマヨネーズが使われていて、ケーキというよりほぼサラダやサンドイッチみたいな感じなんじゃと思った記憶がある。

今回食べたケーキを作ったパティシエは野菜のカッティングと火入れに多分とてもこだわっていて、口に入れた時の食感や味の感じ方が計算し尽くされている感じがした。野菜の甘みの引き出し方と相乗効果を生む素材の組み合わせの実験は自分でもちょっとやってみたいなと思った。パフェもそういう組み立てを試行錯誤できる媒体だと思う。

2025年6月18日水曜日

リンパ節

 


耳の後ろを触るとこぶができていて、押してみると痛い。
高校生の時に時々こういうことあったなと思って「耳裏 こぶ」と調べてみると、リンパ節が腫れてこぶ状になっている説が濃厚だった。いつも気づいたらなくなっていたのであんまり気にしていなかったのだが、10年越しに原因がわかってスッキリした。

2025年6月17日火曜日

ウエハースと小さな差


バイト先で、イタリア土産をみんなで食べることになった。
箱を開けると4種類のサイズのお菓子が3〜6個ずつ入っていて、中身はわからないままなんとなく気になるものを取っていった。
一番大きいのが3cm×6cmくらいの長方形で厚さ1cmほどのもの、次に大きいのが4cm角の正方形で厚みが1.5cmくらいあるもの、その次に大きい(二番目に小さい)のが1cm×4cmくらいの長方形で厚さが1cmないくらいのもの、一番小さいのが2cm角の長方形で厚さが1.5cmくらいあるものだった。それぞれ大きさと厚みが少しずつ異なっていて、私は二番目に大きい正方形のを取った。
包装を取ると出てきたのは、チョコレートとウエハースが交互に重ねられたお菓子だった。今日は梅雨が嘘のように暑い日だったからか、チョコレートは少し溶けていた。結構甘かったが、朝目を覚ますために買った缶コーヒーと合わせるとちょうど良かった。
自分の分を一口食べたところで他の人に中身がなんだったか尋ねると、みんな同じチョコレートウエハースだった。それぞれホワイトチョコとかクランチだとか、何かしら違いがあるもんだと思い込んでいたが違った。厚みと幅の違いをれっきとしたバリエーションとして取り扱っているのだ。

味が違うなら他のも食べてみたいと思っていたのだが、全部中身が同じだとわかってやめた。初めに取ったウエハースを食べながら、同居人はこういう些細な差を楽しむようにできているお菓子があると知ったら興味を持つだろうなと思った。
というもの去年、同居人がイタリアン料理屋でマルゲリータとマルゲリータにアンチョビが乗っているものの二種類を頼もうとしたのを阻止したことがあったのだ。
マルゲリータと何か別のピザを頼んだ後、「果物を二つ食べるとして、スイカとスイカに塩したやつより、せっかくならスイカとリンゴを食べたくない?」と聞いたら、「いやそれはスイカとスイカに塩したのを食べたいよ」と言われた。そこから、妹に寵愛を奪われる姉などにおける兄弟姉妹の微差の話になり、その頃オーディブルで聴いていた村上春樹の『国境の南、太陽の西』で彼女のいとこに手を出す主人公の話へ話はスライドしていった。せっかくなら全然違うものを、とならずに少しの差を感じ取ることを楽しむ人が本当にいるんだなと思ったのだった。

2025年6月16日月曜日

理科の先生から芋蔓式に思い出したこと



昨日の理科の先生の話から芋蔓式に色々思い出した。
小学校という場所は理不尽に怒られることが割とある。それはトラブルの原因側が被害者面をしたり、誰も説明が上手くないことから起こる悲劇なのだと思う。理科の先生は、結果的に誰が泣いたかではなく、わだかまりがどういう経緯で生まれたのかにちゃんと耳を傾けようとする稀有な先生だった。
大豆を発芽させる実験に数週間かけて取り組んだ時のこと。4人班で大豆の発芽をどういう条件の違いで実験するかを決めて、実際やってみるというような内容だった。
ある班がこの実験をするにあたって揉めに揉めた。一人の女子が水の代わりに紅茶を使ってみたいと主張したが、他の班員はあんまり乗り気じゃなかったとかだったと思う。最終的にその女子は紅茶の実験を強行した。他の班員は別で実験をやったのか折れて班としてその紅茶の実験をさせてあげることにしたのかはわからないが、なぜか数週間後にその紅茶強行女子が泣いて、3人の班員たちが理科の先生に呼び出される事態となった。
呼び出されたうちの一人がまあまあ仲良くしている人で、戻ってきたその子が「理科の先生は本当に良い先生だった」といたく感動しながら何があったのか話してくれた。その子は呼び出された時点で絶対怒られると思っていたが、なんでこんな風に揉めるに至ったか優しく尋ねられて、今後似たようなトラブルがあった時にどう対応することができるか一緒に考えたらしい。

小学校の先生の多くは涙を流した側を守って、涙を流させた側を怒っていた。
女子を泣かせてばかりで怒られていたある男子は、先生にとって問題児だったのだと思う。でも実際は女子が少し嫌なことをその男子に言って、男子が仕返しに手を出すか暴言を吐いて、結果的に言い出しっぺの女子が泣くというのがお決まりであった。まあ、その男子は嫌なことを言われた仕返しに髪を引っ張ることが多くて、それは良くないが罠にかけられた気持ちだろうなと思っていた。その男子はよく三人でつるんでいて、女子と揉めて仕返しすると一人は「やったれやったれと」口だけで加勢して、仕返しされた女子が泣くと最後の一人が「いつもごめんな」と代わりに謝るのもお決まりであった。最後の一人だけがモテていて、そりゃそうだと思っていた。

ある日、いらんことを言ったせいで髪を引っ張られて泣いている女子に、先述のモテている男子が慰めの言葉をかけに行くのを見た。彼は「髪って少ない量引っ張ると痛いけど束やとそこまで痛くないやろ。ポニーテール引っ張ったってことはあいつもそんな痛くしたかったわけちゃうやろからわかったって」というようなことを言っていた。
こっそり試すと確かに髪の毛を数本で引っ張ると痛いけれど、束で引っ張るとそこまで痛くない。なるほどと思いつつ、髪を引っ張る側の心理を解説してもそんなに慰めにはならないよと思った。