2022年12月14日水曜日

損失?

自宅の床にホットカーペットを敷いてからしばらく経った。
私は術後、医者からの勧めで実家や旧居で長らく続けてきた地べたでの生活から椅子生活に切り替えた。腰への負担の関係で、正座以外の座りかたにドクターストップがかけられているからだ。椅子生活なのでホットカーペットには足裏しか接しないけれど、足元の寒さが軽減されている感じはしている。これじゃ暖かさを享受し切れていないのではと少し不安にもなるが、今まではホットカーペットと布団の間に挟まってはよくそのまま寝てしまっていたので、それがなくなったのは良いことだと思う。
しかし、ついに昨日ホットカーペットの上で寝てしまった。
アルバイト帰りでかなり疲れていて、帰宅即エアコンを入れたものの部屋の空気はすぐ暖まらなくて、すぐに暖をとれるホットカーペットに吸い込まれてしまったのだった。背骨の手術をしてから硬いところで寝たことがなかったので久々に背中がバキバキになった。そのバキバキ感の中に入り混じる今までと違う違和感に背骨に刺さった数々の金属の存在をはっきりと感じてちょっと怖い思いをした。それはまるで、大量の蝶番を縦に長く繋げたものの端っこを持って、波を描くようにミシミシ動かしている時に蝶番の総体が感じていそうな痛みだった。

朝風呂を終えて、諸々の用事も終えて、夕方はアイドルのバースデーイベントコンサートを観に行った。薄々気づいていることとして、私は1対大勢(客)という状況で舞台上の出来事にのめり込むことが苦手な方なんだと思う。この曲はあの曲だな〜そういえばあの子もこれを歌ってて、それをYoutubeで見てた頃自分はあんな状況で…てか目の前の人ペンライト動かす手首のスナップ凄、そういえば京都で「TANZ」を観に行った時は座りっぱなしなのもっときつかったのにもうかなり良くなったなぁ…あ、なんかコンサート前にチャイ飲んで思ったけどチャイはシナモンよりも生姜が効いてる方が好みかもな……と気づいたら全く違うことを考えていて、「元取るためにもちゃんと見なくちゃ」と毎度焦るのである。それは舞台上を見ていたはずなのに気づいたら後頭部から眼球が逃げ出しているので慌てて追いかけて眼窩に押し込めるみたいな感じで、ドールの頭部に内側から眼球を嵌め込んでは外れて転がっていくのにも似ている。
最近、半分ドキュメンタリー・半分空想の縦読み漫画をいくつか描いて、最終的にそれらを一本にまとめたコミックムービー形式の映像作品を作ったのだけど、家で一人で何度も見返している時は集中できたのに会場に展示したものを見ようとすると途端に眼球が逃げ出す感じがあった。粗探しをするように集中して見る必要がなくなったというのもあるだろうが、こんな感じで「気づいたら見ていない」ことがよくある。見逃したことで損した気持ちになることって多いけれど、それって 見た/見なかった の分断があまりにも大きいことを知っているからなのだろうか?



2022年12月12日月曜日

作り変えられた身体から目覚めた私たちは目を回した。
ヒラメとカレイが融合され、上下左右を見失った人魚(Artificial Fish)も青緑色の空間の中で目を回し続ける。
「いつ以前のように泳げるようになるのか……」
しかし身体を作り変えられた以上、以前はもう戻れない過去である。

2022年12月4日日曜日


背骨を真っ直ぐにする手術を終えてから数ヶ月が経った。
家族や恋人が、傷が化膿していないか時々確認しては「大丈夫」と教えてくれている。その言葉を疑うわけではないけれど、自分の背中がどうなっているのか見たくても見えないことのもどかしさが日々つのっていた。

背骨を固定したことでできなくなった姿勢もありながらなんとか撮ってみた写真には、まだ肌に馴染みきっていない手術創の様子が鮮明に写っていた。自分の背中をまじまじと見つめられるのもカメラのおかげだ。