2022年11月23日水曜日

イメージと戯れる

 

「普段はこの暗室でイメージと戯れています」とある写真家が言っているのを聞いて、理屈はわかるけど実感としてはあまりわからないことだなと思っていた。
けれど、今日アミ点加工をした写真の粒を放流するプロトタイプを作ったら粒がふよふよ漂う様子をずっと見ていられる自分がいて、こういうことなのだろうかと自分なりに腑に落ちた。

寝る前に「粒を放流する」と書いたけど、今朝起き抜けに紅茶を淹れたらティーバッグの中を茶葉が踊っていて、こっちのが近いなと思った。
世界中にばら撒いているというよりは、粒がその場をそっと離れる(逆にイメージに向かっている最中かもしれない)ところを目撃する。

2022年11月22日火曜日

素焼きのコルセットの夢

素焼きのコルセットはやめておいた方がいいという内容の夢を見た。

素焼きは水分を吸収するので患部に滲み出した血清を吸い取って固まる。
すると、外す際にコルセット≒瘡蓋ごとベリっといってしまい治りが悪くなるからとの理由だった。
その話を聞き、自分の肋骨より下が「酢につけて殻が溶け薄皮だけになったぽよぽよの生卵」みたいな質感になるシミュレーションイメージを生々しく想像し、起きた後も何度か思い出してはゾッとした。

2022年11月21日月曜日

リハビリテーション

リハビリテーションを受けて、介助における「一、そばにいろ 二、目を離すな 三、手を出すな」(上田敏、『リハビリテーション医学の世界』、p.350)を被介助者側で体験できたことは貴重なことだったと思う。なぜなら私自身が目と耳両方に障害を持つ盲ろう者の支援者として働く中で、これらのことを肌感で実践してきたためだ。(盲ろう者の介助の基本は「待つ」ことだ。良かれと思ってと言い訳しながら強引に手を出すことは、ただ目の前のまどろっこしさに耐えられない弱さであり、全く本人のためにはならない。)

退院し療養中の今、自分を自分自身で介助するようなまなざしを持って生活している実感がある。観察者も対象も自分自身ではあるが案外取りこぼしは多く、気づけなかったことがあるという事実に向き合う必要もある。

一般的にリハビリテーションは「リハビリ」と呼ばれることが多い気がするが、病院では頑なにみんな「リハ」と言っていた。本の中にも「リハビリ」とはあんまり呼びたくない的なことが書いてあって、それから自分も「リハ」と呼ぶように気をつけている。

2022年11月14日月曜日

縦読み漫画

縦読み漫画に出会ったのは高校生の時だった。
縦読み、タダ読み、comico!というCMが思い出される。広告通りタダで縦読み漫画を色々読めるようになっていた。同級生たちの多くも掲載漫画のキャラクターLINEスタンプを使っていたので読んでたんだと思う。「ReLIFE」とか「ももくり」とか。しかしcomicoは途中で課金制になり、そこでかなりの同級生たちが離脱していったように見えたし私もそのうちの一人だった。
その頃にはアプリ内の漫画に韓国の縦読み漫画を翻訳したものが多くなっていて、くどいほどの美醜についての話に若干飽き飽きしていた。

調べてみると、そもそも縦読み漫画は韓国発祥のものらしい。
web+cartoon(漫画)でWebtoonと呼ばれているのだとか。
(しかしWebtoonという名称は韓国以外の国では商標登録されているので日本ではSUMATOONや縦スク漫画など色んな名前で呼んでいるのが現状)
従来の横読み漫画だと巻売りが基本なところWebtoonは話売りなど、ちょこまか違いがあることもわかった。
数々の違いの中でも、何より、Webtoonはフルカラーで描かれるというのが一番の違いだ。モノクロで印刷されるためそもそもモノクロで描かれる横読み漫画に対し、縦読み漫画はスマートフォンの画面上でみることを想定してフルカラーのデジタル作画で制作されることが多い。そのため、韓国ではすでにアニメ会社のようにWebtoon制作スタジオがあるのだとか。人物担当、背景担当などに分かれて制作をするので作家個人の特徴が薄れやすいという傾向もあるらしい。

少し前、「タテの国」というジャンプラで連載されていた縦読み漫画を読み切って、ずいぶん離れていたけれど縦読み漫画も面白いということを思い出した。
「タテの国」は縦読み漫画の特性を活かした画作りとコマ割りをふんだんに使ったSFで、縦スクロールによる映像的な効果が特に興味深かった。
縦読み漫画について解説しているブログによると「縦読み漫画は心理描写に長けている」とのことで、次は少女漫画を読んでみようと「氷の城壁」に手を出した。
男子2人女子2人の合計4人の高校生の恋愛模様を中心に、その周囲の同級生先輩後輩たちのリアルな心理描写が売りのようで、下に下に読み進めていくうちに一段一段梯子で心の底に向かって下に降りていくような感覚があった。

物語というものはさまざまな方向へ分岐し無数のアナザーストーリーの可能性があるわけだが、縦読み漫画はそれらの話たちを縦に長いキャンバスに矯正する。それって脊椎側弯のぐにゃりと曲がった背骨をまっすぐに直す手術と似た手つきを感じるなと思った。