バイト先で、イタリア土産をみんなで食べることになった。
箱を開けると4種類のサイズのお菓子が3〜6個ずつ入っていて、中身はわからないままなんとなく気になるものを取っていった。
一番大きいのが3cm×6cmくらいの長方形で厚さ1cmほどのもの、次に大きいのが4cm角の正方形で厚みが1.5cmくらいあるもの、その次に大きい(二番目に小さい)のが1cm×4cmくらいの長方形で厚さが1cmないくらいのもの、一番小さいのが2cm角の長方形で厚さが1.5cmくらいあるものだった。それぞれ大きさと厚みが少しずつ異なっていて、私は二番目に大きい正方形のを取った。
包装を取ると出てきたのは、チョコレートとウエハースが交互に重ねられたお菓子だった。今日は梅雨が嘘のように暑い日だったからか、チョコレートは少し溶けていた。結構甘かったが、朝目を覚ますために買った缶コーヒーと合わせるとちょうど良かった。
自分の分を一口食べたところで他の人に中身がなんだったか尋ねると、みんな同じチョコレートウエハースだった。それぞれホワイトチョコとかクランチだとか、何かしら違いがあるもんだと思い込んでいたが違った。厚みと幅の違いをれっきとしたバリエーションとして取り扱っているのだ。
味が違うなら他のも食べてみたいと思っていたのだが、全部中身が同じだとわかってやめた。初めに取ったウエハースを食べながら、同居人はこういう些細な差を楽しむようにできているお菓子があると知ったら興味を持つだろうなと思った。
というもの去年、同居人がイタリアン料理屋でマルゲリータとマルゲリータにアンチョビが乗っているものの二種類を頼もうとしたのを阻止したことがあったのだ。
マルゲリータと何か別のピザを頼んだ後、「果物を二つ食べるとして、スイカとスイカに塩したやつより、せっかくならスイカとリンゴを食べたくない?」と聞いたら、「いやそれはスイカとスイカに塩したのを食べたいよ」と言われた。そこから、妹に寵愛を奪われる姉などにおける兄弟姉妹の微差の話になり、その頃オーディブルで聴いていた村上春樹の『国境の南、太陽の西』で彼女のいとこに手を出す主人公の話へ話はスライドしていった。せっかくなら全然違うものを、とならずに少しの差を感じ取ることを楽しむ人が本当にいるんだなと思ったのだった。