2018年2月9日金曜日

犬の気配

朝バイト先に到着すると、いつも眠そうにしていた工房長の飼い犬の姿がなかった。珍しいなと思っていたら、タイムカードのそばに「2月8日21:30永眠しました。」との貼り紙があるのを見つけた。貼り紙の中には抱かれた元気な頃の飼い犬のそばに「今までありがとう。バイバイ!」という吹き出しがついていた。

私は犬のおかげでバイト先の空間が少し獣くさいのが少し気になっていたが、急にその獣くささが全く無くなって、気配がなくなることがこんなにも不在を確固たるものに感じさせるのだなと寂しくなった。

その犬が亡くなって分かったことは、私は犬の鳴き声や喉の音なんかだと思っていたゴロゴロという音が、椅子を引きずったときの音であったということだった。
しばらく「今日も喉鳴らしてるな~」と思っていたが、よく考えるともうあの犬はこの世にはいないはずなのだった。これまたおかしいなと思ってよく周りを見渡すと工房長が椅子を引くときにその音がなっていることが分かった。けれども、その音を聞いて私が「今日も喉鳴らしてるな~」と思った時、確かに犬の存在があった。
存在とは物質的なものとしてだけでなく、その存在が出す音やにおいによるもので感じていたところが多かったことを知った。