駅から家までの間の道が帰り道になるのは大抵夜だ。当たり前だけど、夜なので暗い。
ある日私はその帰り道を知人と一緒に歩いていた。道中にある税務署の前にさしかかったとき、「なんかここ通るのいつもちょっと怖いんだよね」と言ってみた。税務署は夜になると完全に閉まる上に近くは街灯も少なく暗いので、共感を得るつもりで言った。けれど相手はあまりピンと来なかったらしく、私はなんとか共感を得られまいかと辺りを見渡し「ほら、ここらへん街灯少ないし」「あ、税務署の裏お墓あるし」「しかも、なんか鳥居あるし」とこの道の怖いポイントを探して主張を続けた。相手も確かにちょっと怖いねと納得してくれたのでそのまま帰った。
今日一人で帰り道を歩いていたときに、ふとその日のことを思い出した。今までこの道のことはなんか周りより暗いからくらいのふんわりとした理由で怖いなあと思っていたのが、その日相手に伝えるべく怖いポイントを探してしまったがために、怖いポイントを自分自身に対しても明示してしまった。帰り道にお墓があるだなんてその日に気づいたことだった。気づいてしまったが最後、もうその道を通る度にお墓が目の端にうつり込んでくるようになってしまった。気づいてしまったら気づく前には戻れないと言うが本当にそうだった。引っ越し直前に、やなことに気づいてしまっていたことに気づいた。